目の老化と最先端白内障手術
2026.09.09
「最近、目がかすむ」
「明るいところがまぶしい」
「近くの文字が見えにくくなった」
年齢を重ねると、目にもさまざまな変化が起こります。老眼や白内障はよく知られていますが、緑内障、網膜剥離、黄斑疾患など、見え方に影響する病気が隠れていることもあります。
目の変化は、少しずつ進むことが多いため、「年のせい」と思って受診が遅れることもあります。洛和会音羽病院 アイセンターの栗山晶治さんに、目の老化で起こりやすい病気と、白内障手術について聞きました。
年齢とともに、目にも変化が起こる
老化とは、年齢とともに体のさまざまな機能が少しずつ低下していくことです。目も例外ではありません。
目の中には、光を通す角膜、水晶体、硝子体、光を感じ取る網膜、ものを見る情報を脳へ伝える視神経などがあります。年齢を重ねると、これらの組織にも変化が起こります。
たとえば、水晶体の透明性や弾力性が低下すると、白内障や老眼につながります。硝子体の変化は、飛蚊症や網膜剥離などに関係することがあります。網膜や視神経の変化によって、黄斑疾患や緑内障が見つかることもあります。
目の老化で起こる病気は一つではありません。見え方の変化に気付いたときは、どの部分に異常があるのかを調べることが大切です。
老化に伴って起こりやすい目の病気
- 老視
- 緑内障
- 白内障
- 網膜剥離
- 黄斑疾患
黄斑円孔、黄斑前膜、黄斑浮腫、加齢黄斑変性など
近くが見えにくい「老視」
老視は、いわゆる老眼のことです。
目の中にある水晶体は、カメラのレンズのような役割をしています。近くを見るときには、水晶体の厚みを変えてピントを合わせます。しかし、年齢とともに水晶体の弾力性や、ピントを調節する力が低下すると、近くが見えにくくなります。
40歳代くらいから、近くを見る作業をすると目が疲れる、文字を少し離すと見やすい、細かい文字が読みづらいといった症状を感じ始める人が増えます。遠視の人では、老視の症状を早く自覚することもあります。
治療としては、近用眼鏡、いわゆる老眼鏡を使う方法があります。近く専用の眼鏡のほか、二重焦点レンズ、三重焦点レンズ、多重累進焦点レンズなど、生活に合わせた選択肢があります。
老視の仕組み
気付きにくいまま進むことがある緑内障
緑内障は、視神経が障害され、見える範囲が少しずつ狭くなる病気です。
初期の段階では、視野に欠けている部分があっても、自覚しにくいことが多いとされています。片方の目に見えにくい部分があっても、もう片方の目で補ってしまうため、日常生活では気付きにくいことがあります。
進行すると、視野が狭くなったり、視力が低下したりします。場合によっては、失明につながることもあります。急激に眼圧が上がった場合には、眼痛、充血、目のかすみのほか、頭痛や吐き気を感じることもあります。
緑内障の治療には、眼圧を下げる点眼薬、レーザー治療、手術などがあります。自覚症状が少ない病気だからこそ、定期的に目の検査を受けることが大切です。
緑内障で知っておきたいこと
- 初期は自覚しにくいことが多い
- 視野が少しずつ狭くなる
- 進行すると視力低下につながることがある
- 点眼、レーザー、手術などの治療がある
- 定期的な検査が大切
飛蚊症の奥に、網膜の病気が隠れることも
視界に黒い点や糸くずのようなものが浮かんで見える状態を、飛蚊症といいます。
飛蚊症は、目の中にある硝子体の変化によって起こることがあります。年齢とともに硝子体が変化し、網膜から離れることで、浮遊物のような影が見えることがあります。
多くは老化に伴う変化ですが、注意が必要な場合もあります。網膜に穴が開いたり、網膜がはがれたりする網膜剥離につながることがあるためです。
急に黒い点が増えた、光が走るように見える、視野の一部が欠ける、カーテンがかかったように見えるといった症状がある場合は、早めに眼科を受診しましょう。
黄斑疾患では、ものがゆがんで見えることがある
黄斑は、網膜の中心にあり、ものを見るうえで特に重要な部分です。文字を読む、人の顔を見る、細かい作業をするなど、中心の視力に関わっています。
黄斑に異常が起こると、見たいところが見えにくい、中心が暗く見える、ものがゆがんで見えるといった症状が出ることがあります。
代表的な老化による黄斑疾患には、黄斑円孔、黄斑前膜、黄斑浮腫、加齢黄斑変性などがあります。
見え方の変化を確認する方法として、アムスラーチャートがあります。格子状の線を片目ずつ見て、線がゆがむ、中心が暗い、部分的に欠けるといった変化がないかを確認します。
こんな見え方に注意
- ものがゆがんで見える
- 見たいところが暗く見える
- 中心がぼやける
- 文字が読みにくい
- 線が曲がって見える
白内障は、水晶体が濁る病気
白内障は、目の中の水晶体が濁る病気です。
水晶体は、外から入ってきた光を通し、網膜にピントを合わせる役割を持っています。正常な水晶体は透明ですが、白内障で濁ると光が通りにくくなり、見え方に変化が出ます。
白内障の主な症状には、目のかすみ、視力低下、まぶしさ、明るいところでの見えにくさ、ものが二重・三重に見えることなどがあります。
原因として最も多いのは加齢ですが、糖尿病、アトピー、外傷、紫外線などが関係することもあります。
白内障でみられる症状
- 目がかすむ
- 視力が下がる
- まぶしく感じる
- 明るいところで見えにくい
- ものが二重、三重に見える
白内障の治療は点眼と手術
白内障の治療には、点眼と手術があります。
点眼は、白内障の進行を抑える目的で使われることがあります。ただし、濁った水晶体を透明に戻すことはできません。見えにくさが生活に影響している場合は、手術が選択肢になります。
現在の白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを入れる方法が一般的です。多くの場合、超音波で濁った水晶体を砕いて吸い出し、眼内レンズを挿入します。
白内障手術は広く行われている手術ですが、決して「簡単な手術」と考えるものではありません。後嚢破損、硝子体脱出、チン氏帯断裂など、手術中の合併症が起こることもあります。また、手術後には後発白内障、網膜剥離、術後感染性眼内炎などに注意が必要です。
手術を受けるかどうか、どのタイミングで受けるかは、見え方の困りごとや生活への影響、目の状態を踏まえて医師と相談することが大切です。
手術のタイミングは、視力だけでは決まらない
白内障手術を考えるタイミングは、視力の数値だけでは判断できません。
視力が1.0以上あっても、かすみやまぶしさが強く、生活に支障がある場合は、手術が検討されることがあります。反対に、視力の数値だけで急いで決めるのではなく、本人がどのような場面で困っているのかを見ることが大切です。
運転をする人、細かい作業をする人、読書やテレビを見る時間が長い人など、生活の中で必要な見え方は人によって異なります。
一方で、白内障が強くなるほど手術が難しくなることもあります。視力が大きく下がっている場合は、早めに手術を考えた方がよいこともあります。
手術を相談したいタイミング
- かすみが強くなってきた
- まぶしさで外出や運転が不安
- 明るい場所で見えにくい
- ものが二重、三重に見える
- 視力が下がり、生活に支障がある
- 白内障が進んでいると言われた
眼内レンズにも種類がある
白内障手術では、濁った水晶体の代わりに眼内レンズを入れます。眼内レンズには種類があり、見え方の特徴が異なります。
単焦点レンズは、遠く、近くなど、主に一つの距離にピントを合わせるレンズです。ピントを合わせた距離は見えやすくなりますが、別の距離を見るときには眼鏡が必要になることがあります。
多焦点眼内レンズは、複数の距離にピントを合わせることを目指したレンズです。生活の中で眼鏡に頼る場面を減らせる可能性がありますが、夜間の光がにじんで見えるグレア・ハローや、コントラスト感度の低下などが問題になることがあります。
また、乱視を矯正するレンズもあります。どのレンズが合うかは、目の状態、生活スタイル、仕事、運転の有無、見え方への希望によって変わります。
多焦点眼内レンズは、誰にでも合うわけではない
多焦点眼内レンズは、遠くも近くも見えやすくすることを目指す選択肢ですが、すべての人に適しているわけではありません。
夜間の運転が多い人、光のにじみが気になりやすい人、細かい見え方の質を重視する人では、慎重に検討する必要があります。また、緑内障や網膜の病気など、白内障以外の目の病気がある場合も、適応をよく確認する必要があります。
「眼鏡をなるべく使いたくない」「仕事や趣味で近くを見ることが多い」「運転をよくする」など、希望する見え方は人によって異なります。手術後の生活を具体的にイメージしながら、医師と相談してレンズを選ぶことが大切です。
眼内レンズを選ぶときに考えたいこと
- 遠くをよく見る生活か
- 近くを見る作業が多いか
- 夜間に運転するか
- 眼鏡をどの程度使ってもよいか
- 白内障以外の目の病気がないか
- 見え方の質をどの程度重視するか
多焦点眼内レンズの問題点
見え方の変化を「年のせい」だけで済ませない
年齢を重ねると、目のかすみやまぶしさ、近くの見えにくさが出てくることがあります。こうした変化の中には、老眼や白内障のように多くの人に起こるものもあります。
一方で、緑内障や網膜剥離、黄斑疾患のように、早めの発見や治療が大切な病気が隠れていることもあります。
「そのうち慣れるだろう」「年齢のせいだから仕方ない」と思っているうちに、病気が進むこともあります。見え方に違和感があるときは、早めに眼科で相談しましょう。
まとめ
目の老化では、老視や白内障だけでなく、緑内障、網膜剥離、黄斑疾患など、さまざまな病気が関係することがあります。
白内障は、水晶体が濁ることで、かすみ、まぶしさ、視力低下などが起こる病気です。手術では濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを入れますが、手術のタイミングやレンズの種類は、生活の困りごとや目の状態によって変わります。
見え方の変化を「年のせい」と決めつけず、気になる症状があるときは早めに眼科で相談することが大切です。
監修
洛和会音羽病院 アイセンター 所長
栗山 晶治
この記事をシェアする
次に読むなら