糖尿病は自己責任なのか? 誤解と真実
2026.06.03
「甘いものを食べ過ぎたから」
「運動不足だったから」
「自分の生活習慣が悪かったから」
糖尿病と聞くと、そんなイメージを持つ人も少なくありません。しかし、糖尿病は“自己責任”だけでは語れない病気です。まずは、糖尿病がどのような病気なのかを知ることから始めてみましょう。洛和会音羽病院 内分泌・糖尿病内科の上田健斗医師が解説します。
糖尿病とはどんな病気?
私たちの体は、ご飯やパンなどの食べ物からエネルギーを作っています。そのエネルギーのもとになるのが「糖」です。食事をすると糖は血液の中に入り、全身へ運ばれます。 しかし、糖は血液の中にあるだけでは使えません。細胞の中へ届けて初めて、体を動かすエネルギーになります。その時に働いているのが、「インスリン」というホルモンです。
インスリンは、糖を細胞へ届ける“運び役”のような存在です。ところが、インスリンが十分に働かなくなったり 、インスリンを作る力が弱くなると、糖が血液の中に残ってしまいます。 この状態が続く病気が糖尿病です。
痩せていても糖尿病になる
糖尿病は太った人がなる病気と思われがちです。もちろん肥満はリスクの一つですが、それだけではありません。日本人は欧米人と比べて、もともとインスリンを作る力が弱い人が多いとされています。そのため、「痩せているから大丈夫」「体重は増えていないから安心」とは言い切れません。 実際に、糖尿病の治療を受けている人の中には、痩せ型の人も少なくありません。
本当に怖いのは「血糖値」ではなく「合併症」
糖尿病と聞くと、「血糖値が高い病気」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、本当に怖いのは血糖値そのものではありません。血液の中に糖が多い状態が長く続くことで、血管が少しずつ傷ついてしまうことです。傷ついた血管は全身に影響を及ぼします。
糖尿病による主な合併症
▶ 目の血管が傷つくと…視力低下や失明
▶ 腎臓の血管が傷つくと…腎機能の低下
▶ 脳の血管が傷つくと…脳卒中
▶ 心臓の血管が傷つくと…心筋梗塞
▶ 足の血流が悪くなり、重症化すると切断が必要になることも
なぜ症状がないのに治療が必要なの?
糖尿病には、もう一つ厄介な特徴があります。それは、自覚症状がほとんどないことです。 血液中の糖が多い状態が続くと、血管は少しずつ傷ついていきます。しかし、血管そのものが傷ついても痛みを感じることはありません。 そのため、「体調が悪くないから」と受診や治療をやめてしまう人もいます。しかし、症状が現れた時には、すでに合併症が進行していることがあります。
だからこそ、「症状が出てから受診する病気」ではなく、「症状がないときこそ向き合うことが大切な病気」といえるでしょう。
糖尿病は本当に自己責任なのか
人類は長い歴史の中で、食べ物が不足する環境を生き抜いてきました。 いつ食べられるか分からない時代から、もともと体にはエネルギーを蓄える仕組みが備わっています。ところが現代は、いつでも食べ物が手に入る時代です。
コンビニやスーパーには高カロリーな食品が並び、車やエレベーターなどの機械が発達したことで、体を動かす機会も減りました。昔の体の仕組みと現代の生活環境との間に生まれたギャップが、糖尿病の増加につながっていると考えられています。
だからこそ、「自分がだらしなかったから糖尿病になった」と自分を責める必要はありません。
今日からできること
糖尿病の治療の基本は、食事・運動・薬の3つです。最初から完璧を目指す必要はありません。小さなことでも十分意味があります。
今日からできる心がけ
▶ ジュースをお茶や水に変える
▶ 食事の際は、野菜から食べる
▶ 食後に10分歩く
▶ エレベーターやエスカレーターをやめて階段を使う
糖尿病の診察でよく使われる「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」という数値があります。 これは過去1〜2カ月の血糖値の状態を表すもので、いわば「血糖値の通信簿」です。
この数値を少し改善するだけでも、合併症のリスクを減らせることが分かっています。 自分を責めるのではなく、向き合う。糖尿病は誰にでも起こり得る病気です。 だからといって、放置してよい病気でもありません。
大切なのは、自分を責めることではなく、病気を正しく知ることです。糖尿病と向き合うことは、健康寿命を延ばし、これから先も自分らしく人生を楽しむことにつながります。
糖尿病教室のご案内
日時
2026年7月22日(水)14:00~15:00
会場
洛和会音羽病院 D棟地下1階 会議室4
内容
- 「糖尿病の食事 ~夏の食材と飲み物の選び方~」
栄養管理室 管理栄養士 - 「糖尿病と足の血流 ~足を守るための検査~」
臨床検査部 検査技師
お問い合わせ
洛和会音羽病院
TEL:075(593)4111
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