もしもの前に知っておきたい「がん」の話

胃がんとピロリ菌

  • Vol.03
  • 2026.10.24

胃がんの主な危険因子の一つとされるヘリコバクター・ピロリ菌。感染していても症状が出ないことが多いため、自分には関係がないと思っている方も少なくありません。しかし、感染による炎症が長く続くと、胃の粘膜が変化し、胃がんが発生しやすい状態になることがあります。ピロリ菌と胃がんの関係、検査や除菌治療について知り、胃の健康を守るきっかけにしましょう。

胃の中に住み続けるピロリ菌

ピロリ菌の正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ」です。らせん状の形をした細菌で、胃の粘液層に入り込み、長期間にわたって住み続けます。

胃の中には強い胃酸があるため、かつては細菌が生息できないと考えられていました。しかし、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を使って自分の周囲の酸を中和し、胃の中でも生き延びることができます。
 
感染は、胃酸の分泌や免疫機能が十分に発達していない幼少期に起こることが多いと考えられています。過去には衛生環境や井戸水なども関係していましたが、現在は家族内での感染、特に母子間の感染が多いとされています。一方、免疫機能が発達した大人が新たに感染するケースは少ないと言われています。
 

ピロリ菌の顕微鏡写真

ピロリ菌と胃がんの深い関係

ピロリ菌が胃の中に入ると、胃の表面を覆う粘液を通り抜け、胃粘膜に住みつきます。そして、毒素を出すなどして胃粘膜に炎症を引き起こします。

炎症が長く続くと、胃粘膜が傷つき、次第に薄くなる「萎縮」が進みます。さらに、胃粘膜が腸の粘膜に似た状態へ変化することがあります。これを「腸上皮化生」といいます。
萎縮した胃粘膜や腸上皮化生が見られる胃粘膜は、胃がんが発生しやすい状態といわれています。そのため、ピロリ菌の感染を早めに知り、適切な治療につなげることが大切です。
症状がなくても胃の炎症は進む

胃痛、胃もたれ、吐き気、食欲不振などをきっかけにピロリ菌の感染が見つかる方もいます。ただし、感染していても自覚症状のない方が多く、症状の強さと胃がんのリスクは必ずしも一致しません。「痛くないから大丈夫」とは言い切れない点に注意が必要です。

検査は目的に合わせて選ぶ

ピロリ菌の検査には、胃内視鏡を使う方法と使わない方法があります。

胃内視鏡検査を使うものには、迅速ウレアーゼ試験、組織鏡検、培養検査などがあります。胃内視鏡検査を使わないものには、尿素呼気試験、便中抗原検査、血液や尿による抗体検査などがあります。検査によって、現在の感染を調べるのに適したもの、過去の感染を反映するものなど、特徴が異なります。どの検査を受けるかは、受診の目的や服用中の薬などを含め、医師と相談することが大切です。
ピロリ菌の治療

ピロリ菌の除菌治療では、一般的に胃酸を抑える薬と2種類の抗菌薬を、1日2回、7日間服用します。治療薬には飲み合わせや副作用への注意が必要です。処方薬だけでなく、市販薬、漢方薬、サプリメントを含め、服用しているものを医師や薬剤師に伝えましょう。自己判断による薬の中止や量の調整は避けてください。

治療後は、ピロリ菌がいなくなったかを確認する「除菌判定」が必要です。服薬終了から4週間以上空け、主に尿素呼気試験または便中抗原検査を行い、ピロリ菌が除菌されたかを確かめます。
 
除菌で終わりではない
除菌に成功しても胃がんのリスクがゼロになるわけではありません。ピロリ菌に感染したことのない方に発生する胃がんもあります。
「除菌したから、もう胃の検査は必要ない」と考えず、除菌後も医師と相談しながら定期的に胃の状態を確認することが大切です。

ピロリ菌感染は、胃がんをはじめ、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などと関係します。感染していても症状がないことが多いため、症状だけで判断することはできません。

気になる症状がある方、過去にピロリ菌を指摘された方、検査を受けたことがない方は、まず医療機関で相談してみましょう。検査や除菌治療を受けた後も、定期的な胃の検査を続けることが、胃がんの早期発見につながります。
監修

洛和会音羽病院 シニアドクター

病院長特別顧問 消化器内科部長 兼務

飯沼 昌二

 

専門医認定・資格など

日本内科学会認定内科医/総合内科専門医
日本消化器病学会専門医/指導医
日本消化器内視鏡学会専門医/指導医
日本肝臓学会肝臓専門医
日本消化管学会胃腸科専門医
臨床研修指導医
日本医師会認定産業医
医学博士

 

 

前の連載記事

がん検診の基本─定期的に検診を受けよう

2026.09.28

次に読むなら