もしもの時、地域の安心を支える救急医療 ~救急救命士が大切にしていること~
2026.07.10
突然の体調不良やけが、思いがけない事故。
私たちが普段何気なく暮らしている地域には、24時間365日、救急医療を支えている人たちがいます。
その一人が、洛和会音羽病院 救命救急センター・京都ERで働く救急救命士 古川敦基さんです。
救急救命士というと、救急車に乗って活動する姿を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、近年では病院で活躍する院内救急救命士も増えており、地域医療を支える重要な役割を担っています。今回は古川さんに、救急救命士を目指したきっかけや、地域医療への思いについてお話を伺いました。
「人の役に立ちたい」その思いが原点
古川さんが救急救命士という仕事を意識したのは幼い頃でした。街中を走る救急車を見て、「いつか乗ってみたい」と思ったことが最初のきっかけだったといいます。その思いをより強くしたのが、2011年に発生した東日本大震災でした。テレビに映し出された被災地では、多くの医療従事者が懸命に救護活動にあたっていました。その姿を見て、「自分も人の役に立ちたい」「命を救う仕事に就きたい」と強く感じたそうです。
幼い頃の憧れは、やがて将来の目標へと変わり、救急救命士への道を歩み始めました。現在もその思いは変わることなく、助けを必要とする誰かの力になれる存在でありたい――その気持ちが、日々の活動の原動力になっています。
病院勤務の救急救命士という選択
救急救命士の活躍の場には、消防機関や病院などがあります。古川さんが病院勤務を選んだ理由の一つが、病院救急車の運用でした。
救急救命士が主体となって開業医や病院、介護施設などへ出動し、地域の医療機関と連携しながら患者さんの搬送などを行います。
また、病院勤務には消防勤務とは異なる魅力があり、それは、患者さんの「その後」を知ることができる点です。消防機関の場合、患者さんを病院へ搬送した後の経過を知る機会は限られていますが、病院勤務では救急搬送後の治療や回復の過程に触れることができます。患者さんがどのような経過をたどり、どのように回復していくのか。その過程を知ることができることに、大きなやりがいを感じているそうです。
地域医療を支えるチームの一員として
古川さんの一日は朝礼から始まります。
救急車両や資機材の点検を行い、出動要請があれば現場へ向かいます。院内では救急外来を受診する患者さんへの対応や、BLS(一次救命処置)の指導なども担当しています。
救急救命士の仕事は、一般的にイメージされるよりも幅広く、多岐にわたります。
そして、その仕事は一人では成り立ちません。医師や看護師、薬剤師、臨床検査技師など、多くの職種と連携しながら患者さんを支えています。
「さまざまな職種の方と関わることで、自分自身の知識も広がります」そう話す古川さん。異なる専門性を持つスタッフと協力しながら働くことは、救急救命士としてだけでなく、一人の医療者としての成長にもつながっていると考えられます。
命を救う現場で、一番大切にしていること
現場で大切にしていることを尋ねると、古川さんからは少し意外な答えが返ってきました。
「一番大切にしているのは接遇です」
救急救命士という仕事では、患者さんの状態を迅速に把握し、適切な処置を行うことが求められます。
しかし古川さんは、それと同じくらい患者さんやご家族への接し方を大切にしています。例えば、小さなお子さんと話す時には目線を合わせるためにしゃがんで話すようにされています。
また、不安を抱えて来院される患者さんには、言葉遣いや声のかけ方にも気を配っています。「しんどい思いをして来られているのに、雑な対応をされたら余計につらくなると思うんです。」救急外来を訪れる患者さんの多くは、不安や緊張を抱えています。だからこそ、相手の立場に立って考えることを大切にしているといいます。高度な医療技術だけでなく、人として寄り添う姿勢もまた、救急医療には欠かせない要素なのかもしれません。
「断らない救急」を支える
救命救急センター・京都ERでは、「断らない救急」を目標に掲げています。
症状や疾患にかかわらず、できる限り多くの救急患者さんを受け入れ、地域の救急医療を支えることを目指しています。患者さんやご家族にとって、「受け入れてくれる病院がある」ということは大きな安心につながります。
一方で、多くの患者さんに対応することは決して簡単ではありません。患者さんが集中する日は慌ただしい時間が続きます。
また、全力を尽くしても助けることができない患者さんと向き合う場面もあります。「患者さんを救えなかった時や、ご家族の涙を見る時はやはりつらいです」
そう語る古川さんですが、同時に、「命を預かる仕事だからこそ責任感を持って取り組んでいる」とも話します。その一つ一つの積み重ねが、地域の安心を支えています。
地域の命を守り続けるために
古川さんの現在の目標は、DMAT(災害派遣医療チーム)の資格取得。「地震や豪雨などの大規模災害が発生した際、被災地で活動する医療チームの一員として活躍できる力を身につけたい」
救急救命士は、私たちが普段意識することは少なくても、“もしもの時”に地域を支える大切な存在です。その安心は、日々現場で患者さんと向き合う医療従事者一人一人の支えによって成り立っています。地域の命と安心を守るために、古川さんは、今日も地域に寄り添い続けています。
関連情報
こうした救急医療は、現場で働く人の力だけでなく、それを支える設備や体制によって成り立っています。洛和会音羽病院では現在、地域の救急・災害医療を支える病院救急車の更新に向けたクラウドファンディングに取り組んでいます。日々の安心を支える取り組みとして、ぜひご覧ください。
クラウドファンディング:https://readyfor.jp/projects/otowa4111
救急救命士の採用情報:https://recruit.rakuwa.or.jp/newgrad/paramedic/
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