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子どもの「困った行動」を成長のチャンスに変えるヒント

2026.09.18

 子どもが言うことを聞かない、すぐに怒ったり泣いたりする、やる気がないように見える。 子育ての中で、このような姿に戸惑ったり、どう関わればいいのだろうと悩んだりすることは少なくありません。しかし、大人から見ると「困った行動」に見えるものも、実は子ども自身が何かに困っているサインであることがあります。例えば、言われたことを十分に理解できていない、自分の気持ちをうまく言葉で伝えられない、何から始めればよいのか分からないなど、さまざまな理由が背景に隠れていることがあります。そのため、行動だけを見て叱るのではなく、「この子は今、何に困っているのだろう」と考えてみることが大切です。 

「やらない」のではなく「できない」のかも

 子どもの発達は、体を動かすこと、言葉で気持ちや考えを伝えること、身の回りのことを自分ですること、友達や周囲の人と関わることなど、さまざまな面で少しずつ進んでいきます。 大人にとっては当たり前にできることでも、成長の途中にある子どもにとっては難しいことがあります。また、発達の進み方には個人差があり、得意なことや苦手なことも一人ひとり異なります。 

 そのため、「できるのにやらない」と捉えるのではなく、「どうすればよいのか分からないのかもしれない」「やりたい気持ちはあるけど、まだうまくできないのかもしれない」という視点を持つことが大切です。子どもの行動の背景にある困りごとや気持ちに目を向けることで、その子に合った声かけや支援の方法が見えやすくなります。

宿題を始めないときは、一緒にやる時間を決める

 子どもがなかなか宿題に取りかからないとき、「早く宿題をしなさい」「みんなはちゃんとやっているよ」などと言いたくなることがあります。しかし、命令されたと感じると、子どもはやる気を失ったり、反発したりすることがあります。また、「言われたからやる」という経験が続くと、自分で考えて行動する力が育ちにくくなることもあります。さらに、ほかの子と比べられることで、「自分はだめなんだ」と感じ、自信を失ってしまう場合もあります。 

 まずは、「今日は学校で頑張って疲れたんだね」「今はゲームをして遊びたい気分なんだね」など、子どもの気持ちを受け止める言葉をかけてみましょう。その上で、「じゃあ、宿題はいつする?」と子どもに聞いてみます。「夕飯の後にする?」「お風呂の前にする?」、「明日の朝にする?」など、いくつかの選択肢の中から自分で決めてもらいます。また、リビングや自分の部屋など、取り組む場所も子ども自身に選んでもらうとよいでしょう。時間や場所を自分で決めることで、「やらされている」ではなく、「自分で決めたこと」と感じやすくなり、主体的に取り組むきっかけになります。 

 

感情的になっているときは、落ち着いて話せる環境を整える

 子どもが思いどおりにならずに怒ったり泣いたりしているとき、「どうしてそんなことをしたの?」「なぜ泣いているの?」と理由を聞きたくなることがあります。しかし、強い感情の中にいるときは、自分の気持ちを整理したり、それを言葉で伝えたりすることが難しいものです。そのような状態で理由を聞かれると、責められているように感じたり、うまく説明できないことでさらに混乱したりすることがあります。また、「そんなことで泣かないの」などと気持ちを否定されると、「話しても分かってもらえない」と感じ、次第に気持ちを話さなくなってしまうこともあります。反対に、無視されたり一人にされたりすると、不安な気持ちが強くなり、心を閉ざしてしまう場合もあります。 

 このようなときは、まず「嫌だったんだね」「悲しかったんだね」など、子どもの気持ちを言葉にして受け止めましょう。そして、「気持ちが落ち着いたら一緒に話そうね」と伝え、安心して気持ちを整えられるようにします。子どもが落ち着ける環境をつくってから話を聞くことで、子どもは自分の思いを伝えやすくなります。また、「話せば分かってもらえる」という経験は、自分の気持ちを表現したり、困ったときに相談したりする力を育むことにもつながります。もし、少し距離を置くときは、子どもが見放されたと感じないように配慮することが大切です。言葉を交わさなくても、そばに座る、手を握る、抱きしめるなどの触れ合いを行うことで、安心感を育むことができます。 

友達とのトラブルは、まず子どもの話に耳を傾ける

 学校から「友達とけんかをしたようです」と連絡があると、心配になってすぐに謝らせたり、「仲良くしなさい」と伝えたり、親が代わりに解決しようとしたりすることがあります。 しかし、事情を聞く前に一方的に叱られると、子どもは「親は自分の味方ではない」と感じてしまうことがあります。また、大人の考えだけで解決しようとしても、子どもは納得できない場合があります。さらに、親がいつも先回りして問題を解決してしまうと、子どもが自分で考えたり、相手との関わり方を学んだりする機会が少なくなってしまいます。 

 まずは、「友達とどんなことがあったの?」「そのとき、どんな気持ちだったの?」と声をかけ、子どもの話に耳を傾けましょう。そして、「悔しかったんだね」「腹が立ったんだね」など、子どもの気持ちを受け止めます。その上で、「これからどうしたいと思う?」「次から友達とどう関わる?」などと問いかけ、一緒に考えていきます。親がすぐに答えを示すのではなく、子ども自身が考えられるようにすることが大切です。一緒に状況を整理することで、子どもは自分の気持ちだけでなく、相手の気持ちや立場についても考えやすくなります。また、自分で解決方法を見つける経験は、友達とのトラブルに対応する力や問題解決の力を育むことにもつながります。

苦手なことは、小さな挑戦から始める

 子どもが一度うまくできなかったことや苦手なことを避けていると、「いいからやってみなさい」と背中を押したくなることがあります。しかし、無理にやらせようとすると、子どもは拒否したり、「やりたくない」という気持ちをさらに強くしたりすることがあります。また、「練習しないとできるようにならない」と言われても、失敗の経験が強く残っていると、「どうせ自分にはできない」と感じてしまう場合があります。さらに、親をがっかりさせてしまったと思うことで、「できない自分はだめなんだ」と考え、失敗しそうなことや苦手なことを避けるようになることもあります。 

 そのようなときは、「どうしたらできそうかな」「どこからなら始められそうかな」と声をかけ、子どもと一緒に取り組み方を考えてみましょう。そして、「まずはここだけやってみよう」「一回だけ挑戦してみよう」など、小さな目標に分けることで、挑戦へのハードルを下げることができます。また、できた結果だけでなく、取り組もうとした姿勢や努力にも目を向けることが大切です。「頑張ってやってみたね」「あきらめずに挑戦できたね」と伝えることで、子どもは自分の成長を実感しやすくなります。このような小さな成功体験を積み重ねることは、「やればできるかもしれない」という自信を育むことにつながります。また、結果だけではなく努力や工夫を認めてもらう経験は、「失敗しても大丈夫」「また挑戦してみよう」という前向きな気持ちを育てることにもつながります。 

子どもの心と発達を支えるために

 子どもの心と発達を支える上で大切なのは、できないことだけに目を向けるのではなく、その子のできることや得意なことを見つけて伸ばしていくことです。そして、「ありのままの自分でいても大丈夫」と感じられる安心感を育むことです。 子どもの行動だけを見るのではなく、その背景にある気持ちや困りごとに目を向けること。そして、子どもの気持ちを受け止めながら、その子のペースに合わせてできることを一つずつ増やしていくこと。その積み重ねが、子どもの心と発達を支える力になります。 

 子どもの成長の過程では、周囲の子どもとの違いが気になったり、将来への不安を感じたりすることがあるかもしれません。また、保護者自身も、「自分の育て方が悪いのではないか」「もっと頑張らなければならないのではないか」と、自分を責めてしまうことがあるかもしれません。 子どものことを大切に思うからこそ、よりよい関わり方について、悩んだり迷ったりすることがあります。しかし、そのような思いを抱くのは、子どもの成長を願い、一生懸命に向き合っている証でもあります。 そんなときは、一人で抱え込まず、幼稚園や保育園、学校、医療・福祉の専門機関、地域の相談窓口などを頼ってみてください。周囲の支えを受けながら、子どもも保護者も安心して過ごせる環境を整えていきましょう。 

医療法人社団洛和会 本部 Well-being推進室/洛和会メンタルサポート室
公認心理師・臨床心理士

藤村優菜 

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