がんの放射線治療を正しく知る─副作用はあるの?
2026.09.11
放射線治療装置(リニアック)
「がんの治療」と聞くと、あなたは何を思い浮かべますか? 多くの方が手術や抗がん剤治療をイメージするかもしれません。しかし現代の医療において、それらと並ぶがん治療の3本柱の一つとして、非常に重要な役割を担っているのが放射線治療です 。
「放射線って体に悪そう…」「副作用が怖い」といったイメージを持たれがちですが、実は現代の放射線治療は日々進化しており、体への負担を抑えながら、働きつつ治療を続けることが十分に可能な、非常に患者さんにやさしい選択肢となっています。
今回は、そんな放射線治療の基礎知識から受診の流れ、長年の疑問、そして大注目の最新治療「IMRT(強度変調放射線治療)」について、わかりやすく解説します!
がん細胞を狙い撃ち!「放射線治療」の4つのメリット
放射線治療とは、がん細胞とその周辺をターゲットに放射線を照射し、がん細胞にダメージを与える治療法です。
手術や化学療法と比較したとき、放射線治療には以下のようなメリットがあります 。
なぜ放射線ががんに効くの?「分割してあてる」納得のワケ
「放射線をあてるだけで、なぜがん細胞が消えるの?」と不思議に思いますよね。 放射線をあてると、がん細胞の設計図である「DNA」が損傷します。DNAが傷ついたがん細胞は、やがて分裂して増殖することができなくなり、細胞死を迎えます。その後、役目を終えたがん細胞は体内の免疫細胞(マクロファージなど)に貪食されて自然と消えていくのです 。
現在の医療では腫瘍のみに照射することは不可能です。正常な細胞への照射は避けられません。そのため、 治療ではがんへのダメージを最大に、正常な組織へのダメージを最小に抑える工夫が徹底されています。これは、放射線治療の原則として“がん細胞よりも正常細胞の方が、放射線のダメージから回復する力が強い”という放射線感受性の差を利用しています。
1回で大量の放射線をあてるのではなく、少しずつ何回にも分割して照射することで、その都度、正常な細胞はしっかりと回復し、回復力の弱いがん細胞だけを効率よく退治していくことができるのです 。
ちなみに、治療期間はがんの部位や状態、目的に応じて医師が個別に判断して決定します。回数が少ないから軽症、多いから重症ということではありません。
知っておきたい副作用の真実 脱毛は全体に起きる?
放射線治療の副作用には、大きく分けて早期反応と晩期反応の2つがあります。どちらも全身ではなく、放射線が当たった範囲にのみ起こるのが特徴です。
① 治療中〜終了直後に現れる「早期反応」
治療開始から数週間で現れる一時的な反応で、治療終了後しばらくすると自然に回復していきます。一例として以下のようなものがあります。
- 放射線宿酔(ほうしゃせんしゅくすい):治療開始数日〜2週間頃に見られる、一時的な食欲不振、体のだるさ(倦怠感)、軽い吐き気や眠気などです。「帰宅後に昼寝をしてしまう」といった声もありますが、治療を続けていくうちに自然と改善することが多く、治療に支障が出ることはほとんどありません。
- 放射線皮膚炎:治療開始2,3週間ごろから照射された部分の皮膚が赤くなったり、ヒリヒリしたりすることがあります。摩擦や湿布、こするなどの刺激、紫外線を避けるなど、優しくケアすることが大切です。
② 治療後、数ヶ月〜数年経ってから現れる「晩期反応」
治療が終わってから時間をかけてゆっくり現れる反応のことで、照射した部位によって現れる症状は様々です。医師が長期にわたって経過を観察します。
💡 Q. 髪の毛は抜けてしまうの?
A. 頭部に照射しない限り、髪の毛は抜けません!
放射線治療は、薬物療法(抗がん剤)のように全身に作用するわけではなく、あてた範囲にのみ作用します。そのため、頭部以外の治療(例えばお腹や胸など)であれば、髪の毛が抜ける心配はありません。
実際の受診から治療までのステップ
「放射線治療を受ける」となった場合、基本的な流れは以下の通りです。
①【診察】まずはじっくりお話し(約30分) 放射線治療科の医師が診察し、治療の方針を決定します。具体的な治療スケジュールや、あてる放射線の量、考えられる副作用などを丁寧に説明します。
②【CT撮影】毎回正確にあてるための準備(約20分) 治療計画専用のCT装置で画像を撮影します。毎回まったく同じ姿勢で正確に照射できるよう、オーダーメイドの固定具を作ったり、体に目印を付けたりします。
③【治療計画作成】医師による綿密な設計(1日〜数日) 撮影したCT画像をもとに、医師が最新の「3次元治療計画装置」を駆使して、正常組織への照射を極力避けつつがんに集中させるためのシミュレーションを行います。
④【治療開始】1回の照射時間は約15分! 平日に毎日通院して照射を行います(通常、土日祝は休み)。治療室では、CT撮影時と同じ姿勢を取り、スタッフが正確に位置を合わせて照射します。照射中は別室のカメラで常時見守られているため、安心して受けることができます。
正常組織をさらに守る最新鋭の「IMRT」
従来の放射線治療では、マルチリーフコリメータ(MLC)でがんの形状に合わせた照射範囲を作っていました。しかし、がんの形が複雑であったり、すぐ隣に極めて重要な正常臓器(直腸や唾液腺など)があったりする場合、どうしても正常組織への照射を避けるのが難しいケースがありました。
これを劇的に解決したのが強度変調放射線治療(IMRT)です。 IMRTでは、照射中にこの金属板(MLC)をミリ単位で動かすことで、照射範囲の中で放射線の「強弱(グラデーション)」をつけることができます。
これにより、
- がん細胞には強力な放射線を集中させ、治療効果をさらに高める
- すぐ隣にあるデリケートな正常組織へのダメージを最小限に抑え、副作用を大幅に低減する
という、理想的な治療設計が可能になります。これまで以上に安全で、効果が高く、体にやさしい治療です。
新たな放射線治療装置
この新しい放射線治療機器は毎回の治療の際の位置合わせ画像がより鮮明により速く撮影でき、治療直前の状態を把握することが可能です。これにより狙った場所により正確に照射できるようになります。 洛和会音羽病院では2027年5月ごろ設置予定です。
Varian Medical Systems,Inc.の厚意により掲載又は転載が許諾されています。無断複写・転載を禁じます。
放射線治療というがん治療の選択肢
放射線治療は、治療方針を決める医師だけでなく、実際に治療を担当する診療放射線技師、ケアを支える看護師など、多くの専門スタッフが連携し安全に行われています。
切らずに治す放射線治療は、これからも患者さんの日々の生活と健康を守る心強い味方です。気になる方は主治医またはかかりつけ医にご相談ください。
監修
洛和会音羽病院
診療放射線技師 古谷 明佳
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