「いのち」は、どこから立ち上がるのか 映画 『郷』 が問いかける、「いのち」の尊さと人間の再生
2026.01.07
プロデューサー・小川夏果氏に聞く、心を取り戻す物語

日々、医療や介護の現場で、誰かの「回復」を支え続けている洛和会。私たちが大切にしているのは、単に体が元気になることだけではありません。心が折れてしまったとき、人はどうやって再び前を向くのか。
映画『郷(ごう)』が描くのは、そんな「静かな再生」のプロセスです。この映画には、派手な演出も、分かりやすい答えもありません。あるのは、土の匂いや風の音、光のゆらぎ。そして、自然の中で少しずつ表情を取り戻していく若者のゆったりとした時間だけです。
なぜ「RAKU」がこの映画についてお届けしたいのか。それは、私たちが日々向き合っている「回復」という道のりの本質が、この物語の中に映し出されていると感じたからです。プロデューサーの小川夏果さんにお話を伺いながら、作品に込められた想いと、「いのちを見つめる」ということの意味を紐解いていきます。
10年という歳月が育てた、ひとつの問い
映画『郷』の構想には、約10年という長い時間がかけられました。それは、伊地知拓郎監督が「若者の生きづらさ」や「人が立ち直るとはどういうことか」という問いを、ずっと大切に抱え続けてきた時間でもあります。プロデューサーの小川夏果さんは、その歩みを一番近くで見守り続けてきました。言葉では説明しきれない心の機微を、どう表現するか。
辿り着いたのは、「あえて語らない」という選択でした。
頑張らなくてもいい、そのままの自分でいられる場所
タイトルの「郷(ごう)」という言葉。それは、単なる出身地としての故郷を指すのではありません。
- 誰かに評価されなくてもいい場所
- 無理に頑張らなくても、深く呼吸ができる状態
映画の舞台となる鹿児島の自然は、ただそこに在り続けます。その「無条件の受け入れ」が、疲れ切った心と感覚を、ゆっくりと呼び戻してくれるのです。
主人公の少年は、部活動に打ち込む中で、期待や競争に押しつぶされてしまいます。小川さんは、今の若い世代を「とても真面目で、優しい子が多い」と感じているそうです。だからこそ、誰かに相談できず、自分を閉ざしてしまう。『郷』は、その苦しみを個人の弱さとは捉えません。「立ち止まる時間が必要なこと」「回復には時間がかかること」を、言葉ではなく、映画という時間の流れを通じて、それを描いています。

医療と映画がつながる、「回復」の感覚
医療や介護の現場での「回復」は、決して一本道ではありません。良くなったと思ったら、また少し戻って…。そんな揺らぎを繰り返しながら進んでいくものです。小川さんのお話から伝わってきたのは、回復とは誰かが無理に引き上げるものではなく、その人自身が力を取り戻すのを「隣で静かに寄り添う」ことの大切さ。映画の中で自然が見守る姿は、まさに私たちが理想とするケアの姿に重なります。
教育、地域、そして「郷」がつなぐ未来
この映画は、教育現場で子どもたちに届けることも想定して作られました。 伝えたいのは、正しい答えではなく、もっと柔らかな「感覚」です。
「失敗したって大丈夫」 「疲れたら、一度お休みしてもいいんだよ」 「道はひとつじゃない。もっと自由に選んでいい」
観る人それぞれが自分のペースで感じ取れるよう、映画にはあえて多くの「余白」が残されています。また、本作は鹿児島の地域コミュニティの温かな協力なしには完成しませんでした。人を迎え入れ、支え合う地域の存在そのものが、まさに「郷」という言葉の意味を、現実のものとして体現しています。それは、私たち洛和会が京都という地に根ざし、医療・介護・保育・教育を通じて「まちに溶け込む」ことを大切にしてきた歩みとも、深く重なり合っています。
「やさしい社会」をつくる、確かな一歩
洛和会が掲げる「やさしい社会を創造する」という願い。それは完成されたゴールではなく、問い続け、つくり続けていくものです。映画『郷』もまた、観る人に問いかけます。
- 「あなたは今、どこで呼吸を取り戻せますか?」
- 「あなたにとっての『郷』は、どこにありますか?」
その問いを自分の中に持っておくことが、やさしい社会をつくる第一歩なのかもしれません。

上映情報・作品概要
言葉にならない感情を、映像と音、そして時間の流れとして体験できる映画『郷』。2026年1月、京都をはじめ全国の劇場で公開されます。毎日を忙しく過ごす皆さんにこそ、ぜひ劇場で「自分に還る時間」を過ごしていただければ幸いです。
上映期間
2026年1月9日(金)~1月22日(木)
上映場所
京都:京都シネマ(烏丸四条)
他全国の劇場にて上映
※上映映画館、及び上映時間は、劇場の公式ホームページでご確認ください。
作品情報
作品名:『郷(ごう)』
高校球児の挫折と再生を描く物語。
セリフを極力削ぎ落とし、映像と音でつづる新たな映画体験を通して、
生きている意味や、自分自身の幸せと向き合う時間を描く。
監督・脚本:伊地知拓郎
プロデューサー:小川夏果
- 文部科学省推薦作品「生き方」「人生設計」
- 映倫推薦作品「次世代への推薦映画」
- 郷土愛でつづる、オール鹿児島ロケ
公式ホームページ
https://www.goumovie.com/
最後に「RAKU」編集部より
『郷(ごう)』は、すでに延べ1万人以上の子どもたちが鑑賞し、全国の中学・高校・大学にて『いじめ問題を考える』『人権啓発』『キャリア教育』などの授業で活用が進んでいるそうです。この映画をご覧いただき、心が少しでも軽くなるきっかけになれば嬉しいです。映画のご感想なども、ぜひお聞かせいただけますと幸いです。
洛和会ヘルスケアシステム
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